一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~


私は、ぐいっ!と彼に茶椀とスプーンを押し付けた。凡ミスを犯し恥ずかしくていたたまれない私を、面白がるように構う彼。

やがて数十秒の攻防の後、彼ははぁ、と息を吐いて呟いた。


「…何も言わなきゃよかった…」


「言ってくれて正解です!早く食べて寝てください。」


彼は、ぼそり、と後悔を口にしつつも、大人しくお粥を口に運んだ。


「どうですか…?」


「うん。美味しいよ。」


黙々と食べ進める彼。

スプーンを持つ手や一口が大きくて、やっぱり男の人なんだな、と思ってしまう。寝間着の襟から無防備に覗く鎖骨も、飲み込むたびに上下する喉仏も、色っぽい。


(私、こんな間近で樹さんを見つめたことあったかな…?)


と、思わず見入っていたその時。目を細めた彼が小さく私の名を呼んだ。


「…美香。そんなに見られると落ち着かない。」


「っ!」


「大丈夫だよ。ちゃんと美味しいから。」


味の心配をしていたわけじゃないのだが。

彼の体を見つめて変態みたいなことを考えていたなんて、口が裂けても言えない。

< 77 / 186 >

この作品をシェア

pagetop