一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
私は、ぐいっ!と彼に茶椀とスプーンを押し付けた。凡ミスを犯し恥ずかしくていたたまれない私を、面白がるように構う彼。
やがて数十秒の攻防の後、彼ははぁ、と息を吐いて呟いた。
「…何も言わなきゃよかった…」
「言ってくれて正解です!早く食べて寝てください。」
彼は、ぼそり、と後悔を口にしつつも、大人しくお粥を口に運んだ。
「どうですか…?」
「うん。美味しいよ。」
黙々と食べ進める彼。
スプーンを持つ手や一口が大きくて、やっぱり男の人なんだな、と思ってしまう。寝間着の襟から無防備に覗く鎖骨も、飲み込むたびに上下する喉仏も、色っぽい。
(私、こんな間近で樹さんを見つめたことあったかな…?)
と、思わず見入っていたその時。目を細めた彼が小さく私の名を呼んだ。
「…美香。そんなに見られると落ち着かない。」
「っ!」
「大丈夫だよ。ちゃんと美味しいから。」
味の心配をしていたわけじゃないのだが。
彼の体を見つめて変態みたいなことを考えていたなんて、口が裂けても言えない。