一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
やがて、お粥を綺麗に平らげた彼は、市販の風邪薬をごくりと飲んで、落ち着いたように呼吸をした。
「ありがと。美味しかった。」
「お口に合ってなによりです。」
そう言って、もぞり、とベッドへ潜り込んだ彼に、私は笑いかける。
(食器を洗って、りんごでも剥いてこようかな。食欲はあるみたいだし…)
顔色が少しだけ良くなったようだ。頰に赤みが戻ってきた。
私は、すっ、とベッドから立ち上がる。
と、その時だった。
ぐいっ。
彼の手が、私の腕を掴んだ。
「…帰るの?」
「!」
熱に浮かされ潤んだ瞳が私を見つめていた。
いつもより弱々しい声に、どきり、とする。
「えっと、食器を洗ってこようかなって思って…」
「いいよ、そんなことしなくて。」
ゆっくりと私の腕をなぞるように手を降ろした彼は、きゅ…、と私の手に指を絡める。
“まずい”
じわり、と伝わる彼の体温に、胸騒ぎがした。2人を包む空気がガラリと変わり、恋愛経験の少ない私でもさすがに分かる。
“この男の熱に呑まれる”
戸惑いながら見つめると、気だるげな吐息をこぼす彼。
「行かせたくない。」
「…!」
「…でも、風邪、うつしたくない……」
息を含んで紡がれた甘えるようなセリフ。ぞくぞくと体が震えた。不意打ちの色気と誘うような瞳に当てられて、ぐらりと心が揺れる。
「矛盾してますよ…?」
「うん、分かってる…」