一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

私の手を引き寄せた彼は、自分の首筋に優しくあてがった。

どくどくと振れる脈。じんわりと彼の体温が伝わってくる。


「…美香の手、冷たいね…」


「樹さんが熱いんですよ。熱、あるんですよね…?」


「…うん。……気持ちいい…」


私は熱さまシートじゃない。

しかし、私の手に無意識に擦り寄る彼は、手を離す気がないようだ。彼の体温に侵食されて、じわじわと私の体まで熱くなる。


「美香。」


(!)


形のいい唇が紡いだ声が、記憶の中の声と重なった。


『ーー美香。』


酔い潰れて、彼の腕に抱かれた夜。耳元で囁かれた名前に体が震えた。

急に、頭の中に彼の体がフラッシュバックする。

ベッドの上に、二人きり。

熱を帯びた彼の瞳は、おぼろげな記憶と同じだった。


「ねぇ。今、何考えてる?」


低い声。私の心の中を見透かすような視線に、ぞくり、とする。


「あの夜のこと、思い出した…?」


「っ!ち、違………っ!」


ドサッ…!


反論しようとした瞬間。彼に引き寄せられ、ベッドに押し倒された。

流れるように逆転する体勢。絡められた指に、力が込もる。


(この人、めちゃくちゃ元気じゃない…!)


抵抗しようにも、体が動かない。

至近距離で視線が交わる。

心臓がうるさい。

今から何が起こるのか、彼が何をしようとしてるのか。ぶわっ!と処理しきれないほどの情報と想像が、頭の中に流れ込んだ。

っ、と息が止まる。


「俺は思い出してた。」


「…!」


「全部、覚えてるから。」


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