一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
ピンポーン。
「「!!」」
鳴り響くインターホンの音。
動きが止まる二人。
すると、玄関から聞き覚えのある男性の声が聞こえた。
「樹ー?大丈夫ー?頼まれたもの買ってきたけどー?」
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ガチャ。
扉を開けた先に立っていたのは、大きなダテメガネと帽子を被った、いかにも変装スタイルの如月 恭介だった。
桐生さんの代わりに買出しを頼んでいた彼が、今到着したらしい。
(そういえば、私が樹さんの家に来た時も如月さんと勘違いされたんだっけ。)
「あれ?美香ちゃん?!何でここに?」
樹さんに出迎えられて部屋に入った彼は、私の姿を見て目を丸くした。
すると、樹さんが低く答える。
「桐生に頼まれて看病に来てくれたんだよ。」
「えっ、そうなの?じゃあ、俺、別にいらなかった?」
「いや、ありがたいけど、風邪うつすと悪いからもう帰っていいよ。」
「フォローが雑だよ…!」
苦笑する如月さんに、「うそうそ、助かったよ。」と笑った樹さん。寝室に戻る樹さんに付き添う如月さんを見送り、私は茶碗を乗せたトレーを持ちキッチンへ向かった。
スポンジを手に取り、水を出す。
冷水に触れた途端、一気に熱が冷めた。
(危なかった…!流されるなんて、一生の不覚…!!)
如月さんが来てくれて助かった。
もし、あのまま口付けられていたら、あの戻りなんて出来なかっただろう。私はまだ彼の気持ちさえ聞いてないのに、また順序をすっ飛ばすところだった。
と、そこまで考えて、洗剤のついたスポンジを動かす手が止まる。
脳裏に浮かぶのは、さっきまで目の前にあった熱を帯びた彼の瞳。
(樹さんは私のこと、どう思ってるんだろう。)
まだ、偽恋人…?それとも、少しは本気で私を想ってくれているの?