一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~


ピンポーン。


「「!!」」


鳴り響くインターホンの音。

動きが止まる二人。

すると、玄関から聞き覚えのある男性の声が聞こえた。


「樹ー?大丈夫ー?頼まれたもの買ってきたけどー?」


**


ガチャ。


扉を開けた先に立っていたのは、大きなダテメガネと帽子を被った、いかにも変装スタイルの如月 恭介だった。

桐生さんの代わりに買出しを頼んでいた彼が、今到着したらしい。


(そういえば、私が樹さんの家に来た時も如月さんと勘違いされたんだっけ。)


「あれ?美香ちゃん?!何でここに?」


樹さんに出迎えられて部屋に入った彼は、私の姿を見て目を丸くした。

すると、樹さんが低く答える。


「桐生に頼まれて看病に来てくれたんだよ。」


「えっ、そうなの?じゃあ、俺、別にいらなかった?」


「いや、ありがたいけど、風邪うつすと悪いからもう帰っていいよ。」


「フォローが雑だよ…!」


苦笑する如月さんに、「うそうそ、助かったよ。」と笑った樹さん。寝室に戻る樹さんに付き添う如月さんを見送り、私は茶碗を乗せたトレーを持ちキッチンへ向かった。

スポンジを手に取り、水を出す。

冷水に触れた途端、一気に熱が冷めた。


(危なかった…!流されるなんて、一生の不覚…!!)


如月さんが来てくれて助かった。

もし、あのまま口付けられていたら、あの戻りなんて出来なかっただろう。私はまだ彼の気持ちさえ聞いてないのに、また順序をすっ飛ばすところだった。

と、そこまで考えて、洗剤のついたスポンジを動かす手が止まる。

脳裏に浮かぶのは、さっきまで目の前にあった熱を帯びた彼の瞳。


(樹さんは私のこと、どう思ってるんだろう。)


まだ、偽恋人…?それとも、少しは本気で私を想ってくれているの?


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