一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
どうやら彼は、ワンナイトラブをかました、私と樹さんの関係の契機と言っても過言ではないあの日のことを全てを知っているらしい。
そういえば、樹さんと如月さんは友人なんだった。樹さんがぽろり、と喋ってしまったのかもしれない。
試写会の夜。
ホテルの裏口で如月さんが声をかけてきたのが、友人が酔った勢いで一線を超えた相手を見つけたから、だったとしたら、顔から火が出るほど恥ずかしい。
あの時、すでにバレていたのだろうか。
と、次の瞬間。
私の耳に届いたのは、樹さんの思いもよらない返事だった。
「…してない。」
「え?」
(え?)
如月さんと声と、私の心の声が重なった。
体が強張ったその時、樹さんの声が、はっきりと耳に届く。
「あの夜は抱いてない。」
(!!!)
ざわざわと胸が騒ぎ出した。
私は部屋の中に入ることが出来なかった。