一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
結局、あの日は“用が済んだので帰ります”と書いた置き手紙を、剥いたりんごの皿の下に忍ばせて帰った。
如月さんがいるから私はもういらないだろう、という気持ちになった…というのは建前で、あの発言を聞いてどういう顔をして会えばいいのか分からなくなったというのが本音である。
あの場で追求する勇気はなかった。
今まであれだけ思わせぶりな態度をとっておいて、実はなんの関係もありませんでした、って。ありえないでしょう、普通。
私は、あの夜の一件に心も体も縛られていたというのに。
あれがなければ偽恋人を簡単に引き受けることもなかったし、彼を必要以上に受け入れ、ガードを緩めることもなかったはずだ。
『俺は思い出してた。』
『全部、覚えてるから。』
あの発言も嘘だったってこと?抱いたことを匂わせるような言い方をするなんて。
まさか、何か他に私がやらかしたのだろうか?
「まぁ、とりあえず久我さんとはちゃんと話した方がいいんじゃない?向こうにも色々考えがあったんだろうし。」
「そう、だよね……」
ぽつり、と呟くと、私の肩にぽん、と手を置いた唯が力強く言った。
「落ち込むのは早いよ、美香。恋愛はこっちが主導権を握らないとダメなんだから。今の関係を終わらせて縁を切るにしてもね。…何かあったら私が愚痴でもなんでも聞くからさ。」
「唯…」