一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

と、その時。

ぺし、と黒いバインダーが頭に乗せられた。

ぱっ!と顔を上げると、気だるげにスーツを羽織った同期の彼が目に入る。


「瀬戸…!」


「よぉ。」


さらりと挨拶をした彼の黒バインダーをぐい、と押し退ける。顔色一つ変えずにいつものクールな表情を浮かべる彼に、唯がふと口を開いた。


「お。瀬戸くん、久しぶり。最近休憩の時に顔見なかったけど、忙しかったの?」


「あぁ。今日、例のビュッフェイベントだったからな。準備に追われてたんだよ。」


(…!)


そうだ。

今日は、謝恩会で出されるはずだった肉が納品される六月七日。樹さんが急遽立案したイベントの当日である。

「どうだった?上手くいった?」と尋ねると、瀬戸はドサ、と私の隣に腰を下ろしてネクタイを緩めた。


「あぁ。さっき無事に終わった。そのままホテルに部屋をとったお客様もいるし、結果オーライだな。」


「へぇ、すごい…!」


ホールの責任者を任されていた瀬戸は、インカム片手に走り回っていたらしい。スタッフ総出の準備のおかげで、なんとか問題もなく終わったようだ。

敏腕秘書の桐生さんがすべての経理を担当したようで、無事にお金の面も黒字回復。さすが、の一言に尽きる。

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