一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

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「お疲れ様です。」

「あぁ。お疲れ、桜庭さん。」


午後七時。

仕事を終えて、そろそろ退勤しようかと私服に着替える。そして、社員証を首からさげながらカードキーを通し、ホテルの裏口から外へ出た。

コツコツコツ、と低いヒールを鳴らしながら駅へ向かう。

…と、その時だった。


ホテルの裏手に一台の車が停められたのに気がついた。そして、人目を避けるようにその扉から出てきたのは、帽子に黒縁メガネの男性。

いかにも変装です、と言わんばかりの風貌だ。

そして、彼を見た瞬間。はっと足を止める。


「如月 恭介(きさらぎ きょうすけ)…?!!」


それは、今やテレビで見ない日はないほどの若手人気俳優、如月 恭介だった。

ふと、朝見たポスターが脳裏をよぎる。そういえば、今日スターホールで試写会が開かれる映画で彼は主演を務めていた。

キャスト登壇の舞台挨拶で、彼が来ないはずがない。


(ま、まさか、本人に会えるなんて…!!)


偶然とはいえ、遠目でも見られたことに感激する私。実は、彼がテレビに出始めたばかりのころからファンだったこともあり、テンションがグンと上がる。

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