一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

**


「かんぱーい!」


カチン!とグラスがぶつかる音が響く。ジョッキを片手に笑う人々は、唐揚げやサラダなどをそれぞれ小皿に取り始めた。

重い揚げ物がずらり、と並ぶテーブルは久しぶりだ。飲み会の雰囲気にだんだん気持ちが高揚していく。

ごくり、と喉を流れる刺激と泡の感覚に、じわーっ、と体が熱くなった。


(おいしー…!やっぱり、たまにはお酒もいいよねー…)


二十歳を超えてから、お酒を飲みながらの大人の付き合いが増えた。だんだんとアルコールの嗜み方を覚え、今ではストレス解消の手段になっている。


「おーっ!桜庭!飲んでるー?」


「あっ!美香ちゃん!久しぶり〜!」


他部署の同期が、次々と声をかけてきた。

この場に誘ってもらえたのは幸運だ。

ワイワイとした空気の中にいると、自然と気分が明るくなっていくのが分かる。

唯も私の隣でごくり、とビールを飲み干した。


「唯、相変わらずペース速いんじゃない?」


「んー?そんな事ないわよ。ほら、美香も好きなの頼みな!」


彼女のにこやかな笑顔につられ、メニューを手に取った。

ちょうどグラスが空き、さて、何を飲もうかと考え込んだその時。ふと、“彼”の声が頭をよぎった。


『これからも、俺の前では好きなの飲んでいいよ。…でも、他の男の前では酔い潰れたりしないで。』

『ベロベロになったあんたが他の男に手ぇ出されたらヤダから。』



< 92 / 186 >

この作品をシェア

pagetop