一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

嫉妬するように告げられたあのセリフ。なんで、今思い出すんだろう。

あぁ。私はどこに行っても、頭の中から彼の存在を消すことなんて出来ないんだ。

結局軽めのサワーを頼んだ私は、運ばれてくる料理で腹を満たした。


(別に、酒に弱いわけじゃ無いもんね。樹さんと出会ったあの夜は、酔いたくて酔ったんだから。)


しかし、再び彼に“自制できない無防備女”と思われるのは癪だった。ほろ酔いレベルでセーブするなんて久しぶりのことだが、やはり今日はお酒を飲む気分にはなれない。


「お、噂の桜庭さんじゃないか。」


その時だ。営業部の上司がわらわらと近くのテーブルにつき、軽く声をかけてきた。

他部署ということもあり、顔は知っているが名前は出てこない。そんな程度の仲である。

しかし、彼らは私のことを知っているらしい。当然だ。噂の、と言われれば、あのスキャンダルを指していることくらいすぐに見当がつく。


「そういえば、瀬戸の同期だっけ?誘われてきたの?」


「一度話してみたいと思ってたんだ。スーパー御曹司の久我樹をどうやって落としたのか、とかさー」


落とした、というか、本当に付き合っているわけでもないのだが。

どこかで聞いたことのあるような問いがバンバン飛んでくる。まるで週刊誌の記者のようだ。

報道はどこまでが真実?

久我さんのプライベートってどんな感じなの?

聞きたいことは皆同じらしい。

だが、あのクールで有名な久我樹が、所構わず手を繋ぎたがったり、息をするように口説いてきたりしているなんて、口で言っても想像できないだろう。

< 93 / 186 >

この作品をシェア

pagetop