一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
私からしても、二人でいる時の彼のことは話したくない。
あの澄ました顔が緩んで、極上の甘い瞳になる瞬間。
宝物を愛でるように触れてくる彼のことは、私だけが知っていればいい。
独占欲…?
いや、そんな大層なものでは無い。
だが、なんとなく自分の心の中だけに留めておきたかった。
「プライベートなことなので、ちょっと…」
かつて、記者をあしらった時と同じセリフを口にする。
しかし、彼らはアルコールが入っているせいか、私の言葉を軽く流して引こうとしなかった。
「いいだろー、少しくらい。週刊誌に売ったりしないからさー!」
「桜庭さん、全然お酒進んでないねー!ほら、一杯飲んで楽しくやろうよー!」
茶色の瓶から、トクトクと注がれたビール。空になっていたグラスに泡が立ちのぼる。
まずい。
このまま飲んだら、この人たちのペースに付き合うことになる
頭の中で危険信号が鳴った。
べらべらプライベートを喋るほど酔っ払うつもりはない。しかし、今日は上司に酌をして愛想笑いするような付き合いをするつもりもなかった。
飲み会という場に来たのならば多少の付き合いはしょうがないと思ってはいたが、こんなことになるなんて。
「あ、あの。私、今日はもう結構飲んでますので…」
「おいおい、せっかく注いだんだからさー。飲めないわけじゃないだろー?」
飲めないわけじゃない、というのは、俺の注いだ酒が飲めないわけじゃないだろうな?という意味か?
(め、めんどくさい…!くそーっ…!)
思わず悪態をつき心の中で彼らを睨むが、状況は変わらない。助け舟を出す唯も今はお手洗いに立っている。
仕方ない…!
と引きつった笑みでグラスを持とうとした、その時だった。