一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

**


「あーあー。瀬戸くん、見事に潰されちゃって…」


案の定、空きグラスに囲まれてすやすやと寝息を立てている瀬戸に、唯が目を細めて呟いた。

揺すって声をかけると、「んー…」と気だるげに起き上がる彼。

泥酔、というより、無防備な女の子のような酔い方だ。瀬戸は、用意した水をくいっ、と飲み干して、ゆっくりと立ち上がる。

意識もあり、ちゃんと自力で歩けるようだが、どうもおぼつかない。二次会行く人ー!、なんて声が飛び交っているが、戦線離脱のほか選択肢がないらしい。


「私も抜けるから、タクシーで瀬戸を送ってく。」


「あぁ、お願いね、美香。」


自然とそんな流れになり、瀬戸に肩を貸すようにして店を出た。ぽわぽわとしている様子の瀬戸をタクシーに押し込める。

「住所は?」と尋ねると、「…こまごめ…」と低く返答が来た。

ブォン…、とタクシーが動き出すとともに、後部座席の二人の間に沈黙が流れる。


「ごめんね、瀬戸。大丈夫?気持ち悪くない?」


「…おー。」


ぶっきらぼうな返事。だが、体調は平気なようだ。だんだん眠気が覚めてきたらしい。額を抑えた彼は、低く口を開いた。


「一緒に抜けさせて悪いな。このままホテルいくか?」


「えっ!!!」


「ばーか、ランコントルホテルだよ。スイートに泊まってんだろ?」


紛らわしい言い方をするな。

ただの同僚といえど、私はワンナイトラブ事件以降、その手の単語に敏感なんだから。

意識しているわけではないが、動揺してしまった自分が恥ずかしい。


「いいよ、私のことは気にしなくて。そもそも私は酔っ払いを送るために付いてきたんだからね。」


「そりゃ、どーも。」

< 96 / 186 >

この作品をシェア

pagetop