一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
ぱしっ!
瀬戸の腕を掴むと、彼は驚いたように目を見開く。
「え…?!」
「部屋まで送るよ。」
「な、何で。お、襲う気かよ。」
「誰が送り狼よ、ばか。」
平気だ、なんだと言っていたものの、やがて大人しく私の肩に腕を回す瀬戸。
やっぱり、いつもと少し違う。酔った彼は普段より素直だ。
トン、トン、トン…
アパートの外階段を登っていく。二階の、ある扉の前で立ち止まった彼は「…ここ。」と小さく呟いた。表札には手書きの瀬戸の文字が見える。
「瀬戸、鍵は?」
「ポケットの中。……家の中には、いれないからな…」
「入らないよ!…何か私に見られたら困るものでも?」
「あるよ。」
「えっ!」
「…冗談だよ。」
あぁ、いつもの瀬戸だった。すぐにこうやって私をからかう。反撃のつもりで口にした問いも、あっさり流されてしまうんだ。
くすくすと笑った彼は「ありがとな」と、私から腕を離した。無事に役目を終えた私も、タクシーに戻ろうと彼に手を振る。
…と、その時だった。