ワケあり同士による華麗なる政略結婚
一度果てても彼が離れていくことはなく、またもや奥深くまで繋がった。
好きな人から女として求められる事が、こんなに嬉しくて幸せな気持ちにさせるなんて知らなかった。
これでもう彼の温もりを知らなかったあの頃にはもう二度と戻れない。
行為が終わり離れていくと思っていた彼だったが、そのまま優しく抱き寄せられた。
素肌で抱き合う心地よさについウトウトしまい、目を閉じるとヒヤリとした感触が左手の薬指に感じた。
何事かと目を開け、その感触のした指を見るとそこには見覚えの無いシンプルなシルバーリングが嵌っている。
そしてふと髪を掻き上げた彼の左手の薬指にもそれと同じシルバーリング。
「っ、、これは、、一体、、、?」
『、、結婚指輪だ。今日の午前中はこれを買いに出掛けていた。よくよく考えれば籍を入れただけで、夫婦になった証を何も持っていなかったからな。これからは共に公の場に出て行く事も増えていくだろう。その為にも必要なモノだ。互いに共働きな事を考慮してシンプルなモノを選んだつもりだ。、、デザインが気に入らなくても絶対に外すなよ?』
照れたような表情で視線を逸らす彼に、胸の内側から湧き上がる感情を抑えきれずに思わず抱きつく。
泣いているのがバレないようにその胸板に顔を埋めて、震える声で小さく呟く。
「素敵な指輪をありがとうございます。誰に何と言われようとも絶対に外したり致しません。、、あのぬいぐるみ同様、一生大事にします。」
『、、そうか。』
「はい、、。」
耳をくすぐる優しい彼の声に安心して、またゆっくりと目を閉じた。
今度は直ぐに眠気がやってきて、その眠気に誘われるまま意識を手放したのだった。