ワケあり同士による華麗なる政略結婚
多少無理をしている部分はあるのだろうが、怒られてからは彼が何も言わない限り許されているのだと受け取るようにしている。
部屋着に着替え、毎日の日課である掃除に取り掛かる。
1時間掛けて念入りに掃除を終え、ひと段落した所である部屋が目に留まった。
それは彼の自室だ。
同居は許されてもそこに踏み入るのだけは駄目な気がして、そこだけは掃除できずにいる。
天気のいい休みの日は、布団を干したり空気の入れ替えをしたくてうずうずしてしまうがプライベートな空間に入る事は出来ない。
今日もそこの部屋の掃除を諦めてシャワーを浴びようと浴室に向かった。
少し肌寒い季節になり、浴槽にお湯を張るようになった。
身長162センチある私が浴槽に手足を目一杯伸ばしても全く縁には当たらない広さ。
そこに好きな香りの入浴剤を入れ、ゆっくりと体を温める。
手を伸ばしていると、一部分少し色の変わった腕に視線を向けた。
これは彼が私の中で特別になった日の火傷の痕だ。