大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
遠目でも、いい男だと最近実感している。
近づいて行くと、女にナンパされていたらしい奏は苦笑い中。
ヘラヘラして、ムカつく。
向こうから誘ってきたくせに、ナンパなんてされてるな…
待たせた私が悪いんだけどさ…
「えー、彼女さんと待ち合わせですか?10分ぐらいここで待っているの知ってますよ…もう来ないですって!私と飲みに行きましょうよ」
私が見ている事に気がついた奏が、ヨッと顔の横辺りで手をあげ、女の人にごめんねって顔の前で片手で謝ってこちらに歩いて来た。
「向こうの彼女と出かけてもいいんだよ」
可愛くない事を言ってしまう。
「菜生といる方がいい」
そう言って指を絡めて手を繋いでくる奏に、戸惑う。
勘違いさせるような事ばかりする。
「俺をあの女に押しつけて、菜生はあそこにいる男と出かけるつもりだった?」
ぎゅっと握ってくる奏の手が少し痛い。
「えっ、なに?」
先程告白してきた男性がこちらに近づいてきて、怖いと思って反対の手が無意識に奏の腕を掴んだ。
「さっきはどーも!」
「なに、お前?」
「聞いてない?俺、彼女に告白したんだよね。振られたけど、君、彼女の彼氏?」
私の顔を見た奏は、咄嗟に理解してくれたらしい。