大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

何が頑張れよ、だ。

笑っちゃう…奏だって本当の恋なんてできないくせに!

何が、私に出会えたから本当の恋を知ったよ。

嘘ばっかり…

今だに、奏のスマホには何人もの女性から電話がかかってきているのに…

じとーっと奏を見ているとなんだ?と首を傾げ、人前でバカな事を言う。

「キスしてほしいのか?」

思わずバシッと奏の背を叩いてやった。

痛がる奏に、フンと鼻息荒くしていると、まだいた男が苦笑い。

「本当に、いい男が尻に敷かれてるんだな」

「まぁな…」

「尻に敷いてないし」

「照れるな!真っ赤になって可愛い奴」

もう、どこからこの甘さが出てくるんだ?

もう、いっそのこと嘘ですと暴露したい。

「やっぱ俺も伊東さんのような彼女がいいな…彼が嫌になったら俺のとこおいでよ。じゃあ、また会社で」

散々、引っ掻き回して、何もなかったように帰って行く男の背に奏は独り言ちる。

「ぜってー行かせね…」

やっぱり、最近の奏はおかしい!

「もう、あっち行ったからお芝居しなくていいよ。付き合ってくれてありがとう。助かった」

「最近、一緒にいすぎて油断してたわ。お前、本当に綺麗になってきたよな」

不機嫌さを隠さない奏の指が、私の頬をなぞっていた。
< 103 / 211 >

この作品をシェア

pagetop