大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

なんだか、嫌な予感しかしない。

「奏、ご飯行くんでしょ?お腹すいてぺこぺこなんだけど」

「…あぁ、飯食って腹ごしらえしてからでもいいか!」

んっ?

「ご飯を食べてから何かするの?」

ニヤッと意地悪な表情で耳元に近寄り囁いた。

『朝までコースだからな』

えっ…

「明日、休みでよかったよなぁ」

手を繋ぎ直しご機嫌になった奏に、筋肉痛になったあの日を思い出し、ご飯を食べたら逃げようと決心していたはず…

なのに今、鏡の前で私はため息をつく。

久しぶりにつけられたキスマークが首にバッチリとついているのだ。

ギリギリ、ブラウスの襟で隠れそうな場所なのが救いだ。

奏の奴…

とことん奏に翻弄されて抵抗する気力を奪われた後、『男避け』なんて言ってつけていった。

彼氏でもないくせに…

体中痛いし、筋肉痛だ。

あの鬼畜…手加減って知らないのか!

ぷりぷりと怒りながらも、昨夜の奏を思い出す。

外で外食して帰ろうとする私を半分、いや、かなり強引に奏のマンションに連れて行き、宣言通りに朝までコースで、その後は、甲斐甲斐しく世話を焼き、動けない私にご飯を作ってくれたりもして、ご機嫌な様子でいた。
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