大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「彼シャツに萌えるって誰か言ってたけど、俺の服着ている菜生っていいな」

「何言ってるの?服がないから仕方なく借りてるだけなんだからね」

奏のルームウェアの上を借してくれたが、下は貸してくれないのだ。

「そろそろ、家に帰りたいんだけど…」

広い部屋の中なのに、毎回の事ながら私は奏の膝の上にいて、足元がスースーして落ち着かない。

「…明日、ここから仕事行けばいいだろう」

「無理」

「なんでだよ」

「私、今スッピン。わかる?化粧道具に着替えもないの」

「あぁ、スッピンもかわいいよな」

やっぱり、おかしい…
甘い奏に真っ赤になりながら、彼のおでこを触った。

「熱ないよね?」

「バカ、熱なんてねーよ」

「それなら、私の話聞いてた?」

「着替えも化粧品もないんだろう…一緒に取りに帰ればいい」

「どうして、ここに戻って来る話になるのよ。私帰ってもここに来ないわよ」

「はあっ…なんでだよ。なら、俺がお前の部屋に泊まる」

そして今、私のベッドを占領している。

「奏、そろそろ起きないと会社に遅刻するよ」

「んー、おはよ」

「ほら、朝ご飯を食べて、支度してよ」

ベッドから体を起こしただけの奏の手を引っ張る。
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