大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

すぐに自分に引き寄せた奏は、私の腰を抱きしめ膝の上に座らせると、ブラウスから見えるキスマークを撫で満足して微笑んだ。

「これならしばらく消えないな」

彼氏でもないのに、そんな独占欲いらないから…

そう思うのは、奏との関係が曖昧だからだ。

甘さを隠さない奏はセフレというには違う気がして…

時たま、嫉妬めいた態度を隠さないくせに、好きの一言も言わない奏は、彼氏と呼ぶには違うし…

どちらでもないのだ。

私の方も、この気持ちがなんなのか複雑過ぎて、自分でもわからない。

奏といると猫を被る必要もなく私でいられる。

奏でに抱きしめられると安心する。

奏に求められると許してしまう。

だけど、好きなのかと聞かれたら、わからない。

嫌悪してした時とは違う感情

これをなんて言うのだろう?

健さんに感じていた好きという気持ちとは別もので、俺様なくせに時たま甘えたで愛しいと思う。

「もう、つけないでよ」

「約束できないな…」

「それなら、もう会わない」

一気に不機嫌さを隠さない奏。

「はあっ、わかったよ。見えないとこならいいだろう⁈」

ちょっとしたわがままも、最後には許してしまう。

「見えないとこならね」
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