大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「奏は、忙しいと思いますよ」
ここ数ヶ月の間、私を心配して側にいてくれたけど、もう、その必要はないって、さっき言ってきたから明日から、いやもう帰る途中から奏らしくどこかの女と過ごすに違いない。
「相変わらずなのか!」
「奏のスマホには、次々と女の人から電話はかかってきてましたよ」
「…あれ?菜生ちゃん、奏と会ってたの?」
墓穴を掘った?
「あ、いや…その偶然、飲み屋とかで会ったり」
「ふーん」
誤魔化せた気がしなくて、俯いていた。
「嫁がいる男が、なんで嫁以外の女といるんだ?」
好きだと実感したばかりの人の声に顔を上げると、不機嫌な奏が仁王立ちしていた。
「あぁ、奏…久しぶりだな。まぁ、座れよ」
健さんと私との間に空いていた1人分の間に、奏がドサッと座って私の手を握ってきた。
「へー、そういう事」
1人納得の健さんの声は、奏に隠れて表情が読めない。
「お前、相変わらずなんだって?いい加減1人の女に落ち着けよ」
「今は綺麗さっぱりして1人だけしかいないけど…そのバカ女は、どこぞの誰かに未練タラタラで手を焼いてる」
それって…
握った私の手をぎゅっと握る奏に勘違いしそうだ。
「くっ、はははは…お前がか⁈」
「あぁ、そうだよ」