大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「菜生ちゃん」

「はい」

健さんに突然呼ばれ、声が裏がる。

「俺のバカな友達の話なんだけど、聞いてよ」

奏で隠れて見えてないけど、頷いた。

「そいつさ、昔の俺と同じで女にだらしない奴なんだ」

えっ、健さん?女にだらしなかったの⁈イメージが崩れてがっつりするんですけど…

「俺はちなに出会えて本気の恋を知ることができたけど、そいつはまだ出会えてなくね、『本気の恋愛って何だ?』って言うんだ。だから俺は『お前も本気の相手が見つかればかわるよ』って言ってやったのに、出会えてる事に気がつかないというか、認めるのが怖いから気がつかないふりをしてたのかわからないけど、呼んでもいないのに、その子がいると分かると暇だからとか言ってついて来るくせにさ…その子がいる前で毎回違う女からの電話に出てさ…バカだよね。多分、その子を好きになるのが怖いからわざと軽蔑されようとしてた奴でね…そのくせ、飲みに行くとお酒の弱い彼女が心配で周りにいる男達を牽制して近づけないんだ。その子を突き放したいのか守りたいのか?お前は、どっちなんだよって歯痒かったよ」

「そのお友達、バカですね」

誰かみたいだと隣を見ると、耳を赤くした奏に睨まれていた。
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