大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「ほんと、お前って、智奈美ちゃん以外どうでもいいんだよな」
「ちなの親友だから、傷つけたくないし、気がつかないふりが一番だろう」
「何が一番だよ。智奈美ちゃんに嫌われたくないからのくせに」
「それは、言うな。菜生ちゃん、誰のことかまだわかってないし、いいじゃないないか!」
「こいつ、人のことならすぐ気がつくくせに、自分のことになると鈍いんだよな」
「こいつって…私だよね。今の会話の内容、私がらみなの⁈」
「こうだよ」
奏と健さんは、苦笑する。
「じゃあ、また連絡する」
「あぁ」
降りて来た階段に向かって健さんは上がって行った。
「さてと、帰るぞ」
握っている手を引っ張り歩き出そうとする奏。
「なに、歩けないの?おんぶしてほしのか?」
「違うわよ…1人で帰るから奏も帰れば…もう会う理由ないけど」
追いかけて来てくれて嬉しかったのに…
また可愛くない事を言ってしまった。
「お前になくても俺にはあるけど」
真剣な目で見つめられて、ドキドキする。
「なによ?さっきぶった仕返しにでもきた?」
「あー、あれは痛かった。仕返ししていいか?」
「どーぞ」
ぎゅっと目を閉じて、叩かれるのを待った。