大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
そして、もう一度仕切り直しとばかりに軽くキスをする。
まるで恋人同士だと思っていた。
あっ、そうか…奏なりに健さんを忘れさせようと甘い雰囲気を出してくれてるんだと納得。
エレベーターのドアが開いて、奏に手を繋がれ直して歩るいた角部屋の前。
「今ならまだ、引き返せるぞ」
あーもう、ごちゃごちゃうるさい。
せっかくの雰囲気もその一言で台無しで、その気でここまで来てるんだからと睨んでやる。
「貸して」
奏が持つ鍵を奪い、ドアを開け中に入った。
荷物を床に置いて奏に振り返り、ネクタイを引っ張って自分からキスをすると、ドアがゆっくりと閉まって行くのが見えていた。
大胆になれたのは、酔っていたからだ…
触れ合う唇の上で、微かな吐息が色っぽい男は、キスをしながらドレスの上を這う。その手の動きが艶めかしい。
女の子の扱いに慣れてる奏は、唇からこめかみにチュッとキスをして、その唇がうなじをなぞる。
こめかみへのキスは、キュンとした。さすが、女を切らした事のない男だと感心する。
なんなんだろう…まるで他人事だ。
今からこの男に抱かれるというのに…
酔っているから?
思考が麻痺しているのかもしれい。
「いい匂いがする」