大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
唇に熱い吐息がかかり、塞がれている。
「ちょっと…待ってよ」
「待たない…仕返しなんだから黙れ」
なんで仕返しって言ってキスするのよ。
腰を抱かれ、唇を甘く食んで、焦らすキス。
そうなると、私から奏に抱きついて、もっととキスを深めて求めてしまうと知っている男は、唇の上でクスリと笑った。
「仕返しにならないだろう…我慢してろ」
こんな風にキスされて我慢できないわよ。
女の扱いに手慣れてる奏が、私を変えたくせに…
唇を離した奏が、コツンとおでこにおでこをつけてきた。
数センチ先に、触れてほしいのに触れてくれない唇がある。
「なぁ…俺の代わりに誰も代わりにしないって、どう言う意味?俺はもう、いらないのか?」
切ない声に、ぎゅーと胸が熱くなる。
奏の背中にしがみついて、微かに奏が震えてる気がした。
「奏じゃなきゃダメなの…健さんでもない、他の誰でもなくて、奏がいい」
「なんだよ…セフレとか言うなよ」
「言わないよ…私の抱き枕は奏だけだよ」
素直に好きだって言いたい…でも、奏は?
はっきり言ってくれないのは、奏もだ。
私なりの精一杯の告白に、奏は私の大好きなくしゃくしゃの笑顔で笑った。
「俺も、お前の他に抱き枕なんていない」