大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「キスしていいか?」
自分勝手にキスしていたのに、聞いてしまうのは…好きだと自覚して初めてするキスにびびっているからだ。
「…バカ、散々許可なくキスしてきたくせに、聞かないでよ」
彼女は、俺がまた揶揄っていると思っているらしく、口調が怒り気味。
俺が今、どんなに緊張しているか知ってほしくて、菜生の手を掴み自分の胸に手を当てさせた。
この、速いドキドキが伝わっているだろうか?
驚いた表情の後、彼女はクスッと笑う。
「許可してあげるから、優しく抱いて」
偉そうに…生意気に俺を煽った。
おかげで、俺の緊張はどこかへ行き余裕が出てきて、生意気な口から攻落してやろうと意地の悪い考えが出てくるほどだった。
わざと羞恥心を煽るようにチュッ…チュッとリップ音鳴らして菜生のふくらはぎをゆっくりと撫でてからヒールを脱がすと、お尻をつけたままズルズルと手を使って後退して行き、四つん這いになって追いかけキスを続ける。
間抜けな体勢でキスしている俺たち。
勢いでムードも何もないけど、止まらない。
「逃げるなよ」
「だって…」
彼女が何を恥ずかしがっているのかわからないが、俺はキスをしながら追いかけるのを楽しんでいる。