大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
クンクンと匂いを辿る鼻先がくすぐったい。
「やめてよ」
「俺、この匂い好き」
多分、耳裏につけた香水だろう。
「焦らさないで早く抱いてよ」
やっぱり、かなり酔っている。
こんな私を知らない。
暗がりに目が慣れてきて、挑発に感化された男の目に艶が浮かんだ瞬間をとらえた。
「どんな風に抱かれたいんだ?」
「優しくなんて言わない。何も考えられなくなるまで抱いて」
言い終わると同時に貪るようなキスをしながら廊下を絡みながら奥へ向かう。
時折、壁や何かの角に背や足をぶつけていたが、欲情した2人は痛みも感じなかった。
リビングを通り一番奥の角部屋が寝室だった。
奏はキスをしながら器用にドアを開けて中に誘導する。
月明かりが部屋のベットを照らしている。
「見えるからカーテンを閉めて」
「誰にも見えないから、気にするな」
そうじゃないのに…スポットライトのようにベットを照らしているようで、その下で肌を晒すのは酔っていても抵抗がある。
戸惑っている間に、奏は背後に回りドレスのファスナーを下ろしていた。
背に、少しだけ肌寒い空気が触れ、肩に手をかけた男の手によって床にドレスが落ちた。
身につけているのは、黒いビスチェとお揃いのショーツにガーターベルトとストッキング。