大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

いつの間にか礼装の上着を脱いでいた奏は、ポールハンガーに上着をかけ、ベットに腰かけてネクタイを緩めながらこちらを見ている。

そんな姿が様になって見えるのは、いい男だからだろう。

髪をまとめていたピン抜き、床に落とすと、髪がパサっと落ちそれを指で櫛を通す。

「いい眺め」

と、熱を孕んだ目でジッと見られている羞恥心から

「シャワー借りていい?」

「ダメだ…シャワーを浴びたらお前逃げるだろう!」

だから、逃げないって言ってるのに…信用ないな。

シャワーを諦め彼の前まで行き、ベットに膝をついて立った。

男は、スラックスの後ろポケットから財布を出して中から四角いパッケージを口に咥え、ネクタイを首から抜いた後、シャツのボタンを一つ二つと外す。

鍛えられた胸板がちらっと見える。

着痩せするタイプなのか、痩せているようで筋肉質だと冷静に見ている自分。

「そんなにジッと見て脱がしたいのか?」

「うん」

と、言い終わらないうちに私の手は彼のシャツボタンに手をかけ、全て外していた。

ちらっと見えた筋肉質で綺麗な胸板、そして割れた腹筋を私の手のひらがなぞる。

私はその胸にそっとキスしていた。

こんな大胆になれるのは酔っているせいだ。
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