大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
俺も…とか
好きだ…とか
気持ちを込めて。
そうすると、顔の前で手をかざして確認するのもなんだかかわいい。だが、起きてるなんて知ったら、きっと、頬を膨らませ怒るのだ…その姿も可愛らしくて見てみたいが、この幸せな時間に代えられないから寝息を立て寝たふりをする。
以前なら女を腕に抱いて寝るなんてありえなかったし、彼女が胸元に擦り寄る姿に、他の女に感じる事のなかった愛しさが募る。
どうしたら、この思いが彼女に伝わるのだろうか?
日を増すごとに、打ち解け何度身体を重ねても、素直になってくれない彼女に、愛の言葉を囁くのは簡単だが、そうできないのは、今まで女にだらしない俺を知られているせいもある。
言葉に、重みがないのだ…
だから、俺なりに態度で愛情を示すしかなくて、いつか、心から信じてもらえた時『愛してる』と言える日が来る事を待ち望んでいる。
突然、鼻先をギュッと摘まれ痛みに耐えていると、胸元に擦り寄り抱きついて来る。しばらくして腕に重みが増してきて、そっと薄眼を開け菜生を見れば目を閉じて寝ていた。
普段、つれないくせに…こんな時しか甘えて来ない。
「おやすみ…俺のツンデレ娘」
彼女が寝た事を確認して、唇にキスをしてぎゅっと抱きしめ目を閉じた。