大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「大丈夫…私には奏がいるもん」

「そうだ…俺がいる。勝手に傷つくなよ。辛かったら、連れ出してやるからな」

…嬉しい事を言ってくれる。いつも、これぐらい素直に気持ちを言ってくれたらいいのに…

不意打ちの素直な面を見せられデレた俺は、彼女が可愛くてぎゅっぎゅっと抱きしめた。

「うん、ありがとう。その時はお願いします」

「…素直じゃん」

今日の彼女は本当に素直で、つい顔を覗き込んで頬を突いてしまう。

健と会った事で、彼女の中で何か吹っ切れる事があったのだろうか⁈

「奏が、らしくないこと言うからだよ」

素直な彼女に嬉しくて、舞い上がっていた俺の態度に、へそを曲げた菜生はプイッと顔を背け頬を膨らませてしまう。

あー、滅多に見れない姿に調子に乗ってしまった。

「何怒ってるんだ…なぁ…」

「怒ってないし」

菜生の前に移動して顔を覗いたら、プイッと顔を背ける。

「怒ってるだろ…頬を膨らませてリスみたいだぞ」

「リスみたいに膨らんでない」

頬を両手で隠しているらしいが、隠しきれてない。

かわいすぎて、笑いがこみ上げてしまう。

「なんで笑うの?」

「笑って、ない…」

やべー、笑いが止まらない。

そんな俺を鋭い目つきで睨んだきた。

あー、やばい。この目は本気で怒っている。
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