大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「…突然、なに?…いる?」

いる?ってなんだよ…喜ばないのかよ!

「いる。お前は俺を独占したくないか?俺は、お前を誰にも渡したくないんだけど!」

そこまで言ってやっと頷く菜生を見て、素直にさせるには、まだまだ遠い道のりだと思った。

駅前にある101ビル内にある宝石店「Eternal」は、俺の兄夫婦が指輪を買った場所だった。いくつも種類があるのに、どの指輪も1組分しか作らない唯一のものだ。

ここなら、少しくらいの融通がきくから、今日中に、サイズを直してお互いの指にはめ彼女だと実感してもらう。

選んだ指輪は、ブランド名のEternal『永遠』をモチーフにしたクロスが中央にくるシンプルな作りで菜生らしい。

菜生にはピンク、俺にはブラックのお揃いの指輪がお互いの薬指で光っている。

その手をかざし嬉しそうに笑顔を向けお礼を言ってくれて、買ってよかったと思いつつ、素直な笑顔が眩しすぎて揶揄ってしまったら、繋いでいた手を勢いよく振り払い離れて行こうとする。焦った俺は慌てて引き寄せ肩を抱きながら歩いた。

「その素直さで、言葉の愛情表現をしてほしいよ!」

「自分だって、何も言ってくれないくせに」

「俺は、言葉なんかより態度で充分に示してる」

ペアの指輪を買った意味ぐらい察しろ…
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