大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
はっきりと交際を口に出していないけど、奏の私に対する態度に嘘があったとは思えない。
嘘だよね…
目の前がグラグラ揺れる中、結衣さんの表情だけが鮮明に見え、信じ難い話に、今すぐリビングに入るドアが開いて、奏が入って来ないかと願った。
「菜生も驚いたよね。なんでも知り合いのパーティー会場で奏くんに一目惚れした結衣さんが、私達の結婚式で偶然奏くんに再会して勇気を出して話かけて、奏くんも結衣さんに一目惚れしてたらしくて、付き合うようになったなんて運命的だよね。それに2人のお父さまが顔見知りらしくて、交際を聞いて、とても喜んでいるらしいわよ」
もう、なにかなんだかわからない。
その話が本当なら、私は奏にとって一体なんなのだろう…
2人の交際を微笑ましく思っている智奈美の前でそんな事ないと言えば、この場の雰囲気を壊してしまう気がして、何も言えなかった。
奏が来れば、真実を言ってくれるはず…
「まだ、堂々と交際するには障害があって困ってるんです」
「そうだったわ。菜生にも教えなきゃって思ってたら、つい…ごめんなさい。奏くん、女性関係にだらしなかったでしょう⁈そのうちの一人が、ストーカーみたいにつきまとっているらしいのよ」