大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
可愛そうだよね…と同情する智奈美の側で、結衣さんは私をジッと見ている、その目は敵意を感じるほどだった。
この人なんなの?
奏との関係を曖昧なままにしていたせいで、堂々と私が彼女で、あなたは誰?とはっきり言えないのがもどかしい。
「そのストーカーみたいな人が早く諦めてくれるいい方法がないかしら?料理も上手だし、お淑やかで、優しくて綺麗な結衣さんに勝てるはずないのに、奏くんが不誠実だから結衣さんを悲しませることになって、奏くんは何をしてるのかしら?」
智奈美の怒りの矛先は、奏に向いた。
そこに、健さんと一緒に奏がリビングに入って来た。
「ちょっと、奏くん…彼女を悲しませたままでいいの?」
突然の事に奏は、智奈美の怒りの原因がわからない表情をして健さんを見つめた。
「智奈美、落ち着け…奏なりに考えている。大好きな女を傷つけられて黙っている奴じゃないって」
「…そう?早くなんとかしてあげてよ。ストーカーチックな女のせいでデートもできないなんて可愛そうよ」
「デートできなくても、ほとんど毎日会ってるし、いっそのこと一緒に暮らそうって言ってるのに、頷かないんだよ」
健さんが、玄関前で遠慮なく堂々としててと言った意味は、この事なのかもしれない。