大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「ご飯に行ったり、デートしたりしてるって言ってるじゃん。それはどうなの?両家で結婚の話まで出るほど…結衣さんと親密な関係じゃないの?」
奏の腕の中で暴れる私の肩を掴み、腰を屈めて視線を合わせ見つめてくる彼は真剣な表情をしていた。
「落ち着け…俺が女にだらしなかったのは認める。飯を食いに行った事も事実だ。そのせいで変に期待させてしまったのは俺が悪い。教えてもいないのに会社前で待ち伏せられてたり、マンション前にも来られて迷惑してたのに、そのうち諦めるだろうと相手にせずに放置していた」
「…あ、私、が…私が結衣さんの話を鵜呑みにして、…ごめんなさい」
智奈美は、奏の話から自分が個人情報を漏らしてしまった事に気がついたらしく、健さんを見つめた後、大変な事をしてしまったと顔を覆い泣いてしまった。
「智奈美は、毎日一人で家にいて、俺以外の話相手はきっとその人だけで、慣れない土地で仲良くしていくうちに信用してしまったんだ。働いていたいと言う智奈美の話を聞いて働かせていたら、気をつけていたはず。話を鵜呑みにして確認もせず話してしまった責任は俺にもある。智奈美を責めず許してやってほしい」
健さんが、奏に頭を下げている。