大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「頭なんて下げるな。俺の軽率な行動が蒔いた種なんだ。誰にも迷惑かけずに解決できると思っていたから、その女はつけ上がり、智奈美ちゃんを利用して図々しくこの場に上がり込んでいる。謝るのは俺の方だ。迷惑かけて悪いな」
お互いに謝った後は、この場に相応しくない人物を排除するだけだというように、結衣さんに冷たい表情を向けた。
「図々しいのは、菜生さんよ」
孤立していても、結衣さんの態度は変わらない。
「奏さんに指輪なんか買ってもらって浮かれているようですけど呆れてしまうわ。奏さんも遊びはほどほどになさって、現実を見てください」
「現実を見るのはあんただ。結婚話…そんなもの妄想だろう。親には俺が初めて結婚したいと思った女がいて、今口説いている最中だと話てある」
奏が私の肩を手のひらで握りながら照れたように苦笑いを向けてきて、トクンと胸が高鳴り期待してしまう。
結衣さんは奏の前に出てくる。
「あなたに相応しいのはこの私です。誰とも真剣にお付き合いされなかったあなたが、真実の愛の告白なんて自分からできないのでしょう…だから、私からの告白を待っていてくださってたと知っています。私がなかなか恥ずかしくて告白できない間に、菜生さんに惑わされて、指輪まで買ってあげるなんて、奏さんらしくないですわ」