大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

私の左手の薬指の指輪を見て、睨むような視線を向けた後、奏に微笑んでいた。

もう、何が本当で嘘なのかわからない。

「さっきから迷惑してるって、恋愛感情なんてないって言ってるのに、どこまでおめでたい頭をしてるんだ。あんたは!」

話の通じない相手に奏では苛立ちだした。

「これ以上に、はっきり言わないとわからないなら言ってやるよ。お前なんてタイプじゃない。最初から図々しく電話番号を書いたメモを渡してきて、登録するまで側から離れようとしない女なんて、気持ち悪くて登録してた事も忘れてたぐらいだ。最初電話に出たのだって、菜生を抱いた朝にこいつが、つれない態度をとるからヤキモチをやかせたくて利用させてもらっただけだし、あんたと飯食ってて一方的に自分の事ばかり話されて苦痛だった。帰りなんて駅まで一緒だっただけで、デートなんてしたか?」

「酷い…私の気持ちを弄んでらしたの?」

「弄んだつもりはない…俺にも選ぶ権利はあるんでね…」

ワナワナと真っ赤な顔をして震えだす結衣さんの前で、奏は私の頬を撫でた後、唇にチュッと音を立ててキスをしてきた。

「わかった⁈まだ納得できないか?」

結衣さんに言ったのか、私に言った事なのかわからないでいたら、人前だというのにしっとりと唇を重ね啄ばんできた。
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