大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
人前で見せるには恥ずかしすぎる濃厚なキスから離れようと顔を動かしても両手で掴まれ、抗議する唇も塞がれて抗議するものは握った手のひらのみ。
胸を何度叩いても、緩むことがなく更に体ごと抱きしめられてしまう。
「やめて」
大きな声で叫んだ結衣さんの声も無視して、続けられるキスに戸惑い、私の顔は羞恥心で熱くなり真っ赤になっているに違いない。
「どこまで私を侮辱するのかしら!私の目の前でよくもそんな恥知らずな真似をされるの?…離れなさいよ」
結衣さんのどこからそんな力が出てくるのかわからないぐらい強い力で、奏から私を引き剥がす。
つき飛ばされた私を奏は、咄嗟に手を伸ばして助けてくれた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
私の頭を撫でた後、結衣さんから隠すように奏の背後に追いやられてしまう。
「奏さん、奏さん…好きです。ずっとお慕いしてましたわ」
うっとりと奏を見つめる結衣さんは、どこかおかしい…
「きゃんきゃんとうるさい。そこでよく聞いてろ…」
「はい、聞いてますわ」
ニコニコする結衣さんに背を向けた奏は振り返り、私の左手を握り真剣な表情で見つめてきた。
「健、智奈美ちゃん」
「なんだ?」