大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
傍観者に徹してくれていた2人に顔だけを向けた奏…
「…今から証人になってほしい」
「喜んで」
ニヤッと笑った健さんの横で智奈美は首を傾げた後、頷いていた。
再び、私を見つめる奏の目には結衣さんは写っていない。
「あの日からずっと態度で俺は気持ちを伝えていた。でもそれだけじゃ伝わりきらないよな…菜生…俺のただ1人の大切な女はお前だけだ。俺はお前との未来を本気で考えたいんだ」
嬉しすぎて、一度流れた涙は止まらない。
その頬を流れる涙を奏は指で拭いながら…
「信じてくれって言っても、今までの俺を見ていて信じられない事はわかってる。だから、一緒に住んで菜生の目で俺の本気を確かめてくれないか?」
私は、コクコクと何度も頷く事しかできないでいる。
「…なんですの、この茶番。……そうだわ、こうしましょう!私ほど家柄も容姿も完璧な上流階級の人間には、奏さんクラスの家柄を持つ素敵な容姿をした方じゃないと釣り合いが取れませんの。庶民のあなたなら、奏さんじゃなくても他に釣り合いの取れた方が沢山いらっしゃるでしょう?奏さんを私に譲ってくださらないかしら?」
カチンときた瞬間で、奏に守られているだけなんてダメだと思い、結衣さんの前に立った。