大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「譲るってなんですか?奏はペットでも物でもないわ。あなたは奏を好きだとかお慕いしてますとか言いながら自分に釣り合うとか相応しいとか言って奏の外見しか見てませよね。確かに見た目はいい男ですよ。それを自分でもわかっていて次々と女を取っ替え引っ替えして、来るもの拒まないしサイテーな男で、前までは大嫌いでした。でも、一緒にいる時間が増えていくうちに、奏のいいところは顔だけじゃないって私は知っています。不器用だけど優しいし、意外と甘えん坊だし、見た目と違って豆だし、女にだらしなかった癖に、今は私一筋みたいですし、…結衣さん、諦めてください。あなたが私より完璧な人間でも、あなたが何を言おうと外見しか見ていないあなたを奏は選びませんよ」
「私、こんな侮辱始めてです。こんな屈辱を受けるとわかっていたなら、もっとあなたを懲らしめておくべきでしたわね」
「結衣さん、菜生に何をしたんですか?」
「あら、菜生さんは智奈美さんの親友でしたわね。私が仲良くして差し上げてるのに、あなたは菜生さんのお話ばかりして無神経でしたわ。それでも仲良くして差し上げたのは奏さんのご友人だからですわ。でも菜生さんは、奏さんの周りをうろつく目障りな存在でしたので、少しだけお灸を据えておきましたの」