大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「そんな事をしても、私の気持ちは変わらないし、奏だって、そんなあなたに心惹かれるはずない」
「そんな事ないわ。あなたさえいなくなれば、奏さんは私のものになるはずなのに、どこまでしぶといの!奏さんがあなたになんか会わなければ、今頃、私と奏さんは結婚していたのに…」
先程の高笑いと打って変わりぶつぶつと言いながら、人差し指の爪を噛んでいる。
「そうよ…奏さん、私達の素晴らしい出会いを思い出してください。三年前の運命的な出会い、高須様のガーデンパーティーで突然雨が降ってきて、びしょ濡れにならないようにと私に奏さんが着てらしたジャケットをかけてくださって、屋根のある場所まで一緒に手を繋いで走ってくださったあの日を…私を気遣う名前も知らないあなたに、私は一目で恋しましたわ。それから、何度もパーティーであなたにお会いしてましたのに、照れて声をかけてくださらないんですもの…そのうち、奏さんの近くにはあなた、菜生さんがいて私の存在を忘れてしまわれて…だから、智奈美さんに近づいて仲良くしていればお会いする機会があると…彼女の結婚式で再会して私を思い出していただけると思ってましたのに、先程の奏さんのお言葉に傷つきました」