大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
その後、奏は納得しないまま結衣さんに誓約書にサインさせ、結衣さんのご家族に今回の事を報告すると告げた。
二度と同じ間違いを犯さないように彼女の家族に、結衣さんを見張らせると…
奏は、容赦なく結衣さんのご家族に連絡をとり、これまでの経緯を精細に話し彼女を迎えに来てもらうよう伝えた。
しばらくして、ご両親が慌てて駆けつけて低姿勢で奏に謝罪している。
「謝るの相手を間違えてませんか?彼女はおたくのお嬢さんに酷い嫌がらせを受け苦しんでいたんです。それなのにあなた達は、ご自身の会社の心配ばかりして、俺に頭を下げてばかり。そんなのだからお嬢さんも常識を外れるんです。今回の事は、父にも報告させて頂きます。あなた方ご家族とこれからのお付き合いを考え直すかは、あなた方次第です。彼女を連れてさっさと帰ってください」
冷たく突き放す奏に、一回り以上年上の大人が蒼白になって帰って行った。
静けさが訪れた中、智奈美と健さんと奏と私が一斉に笑い合う。
「これで、とりあえずは一安心だな」
奏の肩を叩く健さんに、彼は苦笑いを浮かべながら頷いていた。
「菜生…知らなかったとはいえ、いろいろとごめんね」
ぎゅっと抱きついてくる智奈美は、申し訳なさそうに目を潤ませる。