大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

胸がチクっとして見ていられなかった。

披露宴で、彼女は幸せそうな2人を見ながら、何杯目かわからないほどシャンパンを飲んでいる気がする。

うなじがほんのりと赤く、悲しげな表情に色っぽさが増す。

辺りの男どもの獲物を狙った目つきに気がつきもしない。

まったく無防備だろう…と、彼女に近寄った。

話しかければ、相変わらずの憎まれ口のなか、酔っているからか、いつもより俺に饒舌に話をする。

そこで、まさかの健からのライバル扱いを宣言されていたなんて、可笑しくて笑えた。

恋する男に、女として見てもらえない可哀想な奴。

他にも男はいただろうに…例えば、俺とか!

…いや、なにいってるんだ。いい女だと思うがタイプじゃない。

彼女だって、俺は絶対ないから、いつもツンケンした態度をとっているのだから…

長い片思いに今日で卒業すると宣言するくせに、今だに視線の先を見て悲しげな目をする。

そんなので忘れられるのかと、『へー』と聞き流したのが、また、彼女の勘に触ったらしい。

シャンパンを手酌酒をする姿、今思えば笑える。

何度か飲んだ事のある仲なので、それほどお酒に強くないのは知っているから、手に持ってきていたスパークリングウォーターを手渡した。
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