大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

見えもしないのに、家の中にいるであろう女を見る健。

「菜生にきていた手紙の字に見覚えがある。綺麗な字だが癖字が印象的だったからな」

「間違いないなら、やばいぞ」

「あぁ、わかってる」

悠長に構えてる場合じゃないと、2人して家の中に急いで入っていった。

リビングから聞こえた大きな声に、焦りを感じた瞬間、訳がわからないまま智奈美ちゃんに怒りを向けられた。

「ちょっと、奏くん…彼女を悲しませたままでいいの?」

「智奈美、落ち着け…奏なりに考えている。大好きな女を傷つけられて黙っている奴じゃないって」

「…そう?早くなんとかしてあげてよ。ストーカーチックな女のせいでデートもできないなんて可愛そうよ」

俺は、智奈美ちゃんが全て知っていて言ってきているものだと思った。

「デートできなくても、ほとんど毎日会ってるし、いっそのこと一緒に暮らそうって言ってるのに、頷かないんだよ」

菜生の横に立ち、彼女の肩を抱いた。

だが、智奈美ちゃんは不機嫌そうに俺を睨んでいる。

「いくら菜生と長い付き合いだからって、彼女の前でそれはよくないよ」

「彼女?俺の彼女はこいつだけしかいないけど、誰のこと言ってるんだ?」
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