大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
噛み合わない会話に、智奈美ちゃんはまだ何も知らないのだと悟った。
ほら…と、智奈美ちゃんに背を押され俺の前に立つ女は、俺にまとわりついて女だった。
「だれ?」
「ふざけないでよ。結衣さんだよ」
知ってるよ…だけど、俺の女でもない。
「ゆい?あー、いつも俺の会社の前で待ち伏せていた女か」
「ひどい…奏さんが忙しくしてるから、私から会いに会社まで行かないと会えないのを我慢してるのに、…諦めの悪い方がいるせいで、私とまだ堂々と付き合えないってわかってますけど、そんな言い方ひどいわ」
「奏くん、彼女に謝って…そして早く女性関係を整理してあげてよ。結衣さんがかわいそうだよ」
智奈美ちゃんを味方につけ、バレる嘘を突き通すなんて神経が図太い。
「智奈美、お前が出しゃばると余計にややこしくなる。奏と菜生ちゃんの指をよく見てみろ」
健の援護射撃は効果覿面だったらしく、智奈美ちゃんは俺たちの指輪に気がついたらしい。
「あのさ、何を勘違いしていたか知らないけど、智奈美ちゃんの知り合いだから、優しく接してただけで、あんたに恋愛感情なんてないけど」
ここまで言ったのに妄想が混ざって、自分が本命だとか、結婚話とかわけのわからない事を言い出す。