大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

式が終わり、会場から出て2人で写真を撮ったり、高校の友人達と久々の再会を懐かしんだりしていた時、成人式を迎えた着慣れないスーツ姿の男達とは違う、細身のスーツを着こなした大人の男性が近づいてきた。

二重まぶたの大きな目、スッーと筋の通った高い鼻、薄くもなく厚くもない唇、高い身長に長い足が嫌味に見えない。テレビから出てきたような容姿に、アイドル歌手?と思ってしまったぐらいだ。

「ちな」

友人を甘い声で呼ぶ男性の表情は、柔らかく微笑んでいる。

「健くん」

彼を見て頬を染め駆け寄る智奈美は、恋する乙女だった。

この時に、初めて健さんを紹介してもらい、2人が付き合い出したばかりなのだと聞いた。

智奈美は、3年の短大を卒業して地元で保育士に…
私も、同じ年に短大を卒業し県外から戻って、中小企業会社の受付。

こちらに戻ってから、また仲良く会社帰りに飲みに行ったり、遊びに行ったりとしていた。

その度に、お迎えに現れる健さんは、智奈美を溺愛している姿が微笑ましかった。

そのうち、3人で出歩く事もたまに出てきて、お邪魔していて気が引けながら、ユーモアたっぷりある彼といるのが楽しくなっていた。

そして、気がついたら彼に恋していた…

< 2 / 211 >

この作品をシェア

pagetop