大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
式が終わり、会場から出て2人で写真を撮ったり、高校の友人達と久々の再会を懐かしんだりしていた時、成人式を迎えた着慣れないスーツ姿の男達とは違う、細身のスーツを着こなした大人の男性が近づいてきた。
二重まぶたの大きな目、スッーと筋の通った高い鼻、薄くもなく厚くもない唇、高い身長に長い足が嫌味に見えない。テレビから出てきたような容姿に、アイドル歌手?と思ってしまったぐらいだ。
「ちな」
友人を甘い声で呼ぶ男性の表情は、柔らかく微笑んでいる。
「健くん」
彼を見て頬を染め駆け寄る智奈美は、恋する乙女だった。
この時に、初めて健さんを紹介してもらい、2人が付き合い出したばかりなのだと聞いた。
智奈美は、3年の短大を卒業して地元で保育士に…
私も、同じ年に短大を卒業し県外から戻って、中小企業会社の受付。
こちらに戻ってから、また仲良く会社帰りに飲みに行ったり、遊びに行ったりとしていた。
その度に、お迎えに現れる健さんは、智奈美を溺愛している姿が微笑ましかった。
そのうち、3人で出歩く事もたまに出てきて、お邪魔していて気が引けながら、ユーモアたっぷりある彼といるのが楽しくなっていた。
そして、気がついたら彼に恋していた…