大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

美味しくないと脇腹を殴られる。

結構地味に痛かった。

痛がる横で、笑いが止まらない彼女は、かなり酔っている。

普段の彼女なら、きっと殴ったりしない。

照れくささを隠しツンケンして(ありがとう)というはず。

披露宴が終わった二次会会場は、駅近くのダイニングバー。

二次会途中で新郎新婦はハネムーンに向かい、会場はコンパのようにあちこちで男女が集まりだす。

そんな中、1人カウンターでお酒を飲む後ろ姿は菜生だった。

俺の近くにいる男達が、彼女に声をかけようかと企んでいる会話が聞こえて、誰に頼まれた訳でもなく俺は無意識に彼女のとなりに席を陣取り、辺りを牽制していた。

『ひとり酒かよ。さみしい奴だな』

『うるさいな…ほっといてってば』

彼女の前だと、つい憎まれ口が先に出てしまう。

それに彼女も憎まれ口を叩く。

これはいつもの光景だった。

やけを起こして、酔って変な男にお持ち帰りされないように、俺なりに心配しているから言った一言が、彼女にいい案だと思わせてしまった。

『誰でもいいから慰めてほしい』なんて、後ろの奴らが聞いたら我先にと競うだろう。

あんな奴らに触れさせてたまるか!

なぜ?そう思った?
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