大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「現実を見るのはあんただ。結婚話…そんなもの妄想だろう。親には俺が初めて結婚したいと思った女がいて、今口説いている最中だと話てある」

菜生に信じてほしくて、彼女の手を握り見つめた側で、俺に相応しいのは自分だとか、俺が結衣って女からの告白を待っていたとか、菜生惑わされて、指輪まで買ってあげるなんて、俺らしくないとかきゃんきゃんと御託を並べ、もう、言ってる事がめちゃくちゃすぎて笑えてくる。

こんな女に、何を言っても変わらない。

俺は、菜生の気持ちを繋ぎ止める為に女を利用し、煽って、菜生に対する嫌がらせを女の口から言わせてやろうと目論んだ。

傍観者に徹していた健に目配せをして合図する。

「…今から証人になってほしい」

今からの会話を録音するように…

ニヤッと笑った健は、わかってくれたらしく『喜んで』と、ズボンの後ろのポケットの中にあるだろうスマホを操作し、オッケーだと頷いた。

再び、菜生だけを見つめて

「あの日からずっと態度で俺は気持ちを伝えていた。でもそれだけじゃ伝わりきらないよな…菜生…俺のただ1人の大切な女はお前だけだ。俺はお前との未来を本気で考えたいんだ」

菜生の頬を流れる涙を指で拭う。

「信じてくれって言っても、今までの俺を見ていて信じられない事はわかってる。だから、一緒に住んで菜生の目で俺の本気を確かめてくれないか?」
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