大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
俺に見向きもしない女なんて初めてで、健に一目惚れしたであろう菜生に一瞬で恋に落ち失恋した瞬間でもあったあの日は、忘れられない。
その日から、自分をごまかし菜生との距離の取り方に、何度も自己嫌悪で落ち込む度、報われない恋をする女が愛しくて、ただ側にいるだけしかできない恋愛初心者のような俺は、あちこちとふらふらとして気持ちをごまかしていたのだから…
俺と健の証言で思い違いに気がついた女が、今度は兄貴にまとわりつくかもしれないと、クギを刺してやる。
菜生を苦しめて、勘違いでした!ごめんなさいで済ませてたまるか。
突然の嫌がらせ相手の出現に、怖かっただろうに俺をモノ扱いされて瞬間、立ち向かっていった菜生の気持ちが嬉しい。
だからこそ、徹底的に追い詰めてやるつもりでいたのに、この女が、また同じ事を繰り返すと疑わないらしく、優しい菜生は女を許してしまう。
だが、俺は好きな女を傷つけられて黙っていられるほど、お人好しじゃない。
警察沙汰にしない代わりに、女の親にも責任を取ってもらう。
俺の両親に、この事を告げればあの親子は終わりだ。
一生、俺たちの前に現れることはないだろう。
菜生を守る為なら、頭を下げたくないが親も利用する。