大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
騒がしいお客に帰って頂き、俺たち4人で智奈美ちゃんの手料理をご馳走になった。
食事の後は、男同士、女同士に別れお酒を楽しんでいる。菜生と智奈美ちゃんがどんな会話をしていたのか想像できるからか、健にはっきりとしろと促されていた。
わかっているんだ…
態度だけじゃ不安なんだと…
気持ちも口に出してもらえず、彼女の態度もイマイチなのは、俺の思わせぶりな態度に原因があるとわかっているんだが…
突然、智奈美ちゃんが俺たちの関係に口出しできて健が口を出すなと止めてくれたが、俺の視線に、菜生は気まずそうに視線を逸らした。
はっきり言わない俺が悪い…
指輪をあげても
一緒に住もうと言っても
プロポーズめいた事を告げても
確かな言葉が抜けている。
帰宅しながら、頭の中で何度もシュミレーションし、かっこよく告白するつもりでいたのに、思う通りに事は運ばない。
最初に出た言葉が
「まだ、アパート帰るって言わないよな」
嫌がらせが解決した今、一緒に住もうと強く言えなく、つい、不安から出た言葉に自分自身呆れてしまう。
「…帰ってほしくない?」
「当たり前だ。一緒に居たくないのかよ?」
俺の気持ちを弄ぶように、意地悪く笑う菜生に憎まれ口が出て、素直に帰るなと言えないでいた。