大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「奏は?私と一緒に居たい?」
「だから、引っ越して来いって言ってる」
「同居なら、家賃とか光熱費、食費も折半で出すって条件なら考えてもいいよ」
「このフロアー全部俺ん家の物。各扉の向こうに親と、兄貴夫婦が住んでる。だから、家賃もない。光熱費も食費も折半なんてさせない。お前は、お前の言う必要な物と身一つで来ればいいんだよ。それに、同居じゃなく同棲、まぁ、すぐにお前も家族の一員になるけど」
俺を気持ちを試すような口ぶりに焦れて、逆に菜生の気持ちを引き出そうと企んだ。
「そんなのわからないもん。一緒に住んでお互い嫌な部分って見えてくるんだからね」
「今、言ったよな。一緒に住むって」
「…言ったけど言ってない。例えばだから」
全く、埒のあかないやりとりは、お互い惹かれてると確信しているのに、素直になれないせいで険悪にはなりそうで俺は内心焦っていた。
「そんなのひっくるめて俺には菜生しかいない。いい加減認めろ。俺に惚れてるんだろう⁈」
俺が今最大限にできる告白に
「あなたになんて恋してないんだから」
菜生の言葉は、胸に突き刺さり放心状態。
そこに、彼女は俺の唇めがけキスをしてきた。
ほんと、なんだよ…このツンデレ娘。